実際自分が思い描いていた高校生活は、もっと充実したものでした。
中学生の頃は、自分のキャラクターに自信があり、実際周りにも物凄くウケていたんですが、高校では思う様に「ここでこれを言ったら笑いが取れる」というタイミングが狙えず、どのグループにいても、自然な流れで会話に混ざることが出来ませんでした。
二年になってクラスメイトが変わっても状況は変わらず、鬱憤が溜まり過ぎて高校を中退してしまいました。
父親は当然、いじめられた訳でも無いのに、何をやってるんだと僕を叱りました。
男親ですから、息子を怒鳴って当然です。
そういう訳もあって、とにかくこれから高卒の資格を取るか就職をするか、岐路に立たされました。
そんな折に、父方の実家から連絡があり、家業を継がないかと誘いがあったんです。
家業と言うのが東北の味噌蔵の経営で、父はそこの四男坊で、継いだのは父の兄弟の長男と次男の方です。
あまり父の実家には行った事は無いし、それまで東京に住んでいた自分が田舎暮らしに順応出来るかという不安はあったんですが、伝統文化を守るなんて粋だなぁと思ったし、散々躊躇しましたが継ぐ事を決意しました。
因みに今、蔵を守ってるおじさんたちは自分の息子たちに継がせないんだろうかと気になったんですが、味噌の消費量は少なくなっており、今自分の子供たちに大変な思いをさせていいものかと悩んでいたそうです。
僕に対しても同じ様に思った様ですが、せっかくおじさんたちが自分たちの蔵をインターネットで紹介したり、直営のカフェを作ったりしてるし、もっと若い自分にだって、時代のニーズに合わせたアイディアが浮かぶんじゃないかと、考えました。
今僕は蔵で働き、カフェの手伝いもしていますが、蔵の匂いは好きだし、カフェのまかないも美味しくて、幸せを感じています。
人間関係で悩んでいた高校時代が、今になって自分の事じゃないみたいに感じるのは、仕事と常に向き合い技術を磨いていく日々に没頭しているからなのかもしれません。