私の地元は田舎で、それでも小さい頃は商店街にも活気があったんですが、中学くらいになると人なんて殆ど通らなくなって、大体のお店のシャッターが閉まった状態になるまで過疎化が進んでいました。
商店街を抜けて暫く歩くと高校があり、そこに私は通っていたんですが、学生通りの商店街のお店は、コンビニと本屋とラーメン屋だけが辛うじて営業していて、要は学生に需要のある店しかやってないという現状だったのです。
大人は車で同県内にある都市部の方に行って買い物をしてしまうので、必然的に商店街は廃れてしまいます。
近所の高校の方がギリギリまで寝れるし、偏差値的にもここで精一杯だなと思って選んだんですが、この鬱屈とした商店街を通って学校に通うのが嫌で嫌で、おまけに学校でも人間関係が築けなくって、結局中退してしまいました。
両親には「これからどうするんだ」と責められ、家の居心地も悪かったんで、どこかでバイトでもしようかなぁと思ったんですが、たまたま中学時代の友達から誘いがあって、「うちの工房に来ない?」という事だったんで、何となく行くことに。
その子は中学を卒業してからすぐに家業の陶芸を継いで、陶芸家の卵でした。
私は陶芸に興味がちょっとあったんで、その子を羨ましく思ったのを覚えています。
因みに私たちの地元には小さな山があって、その山の麓に彼女の家はあり、そこで土を採取して陶器を作っています。
そういった生活感を目の当たりにすると、また羨ましくなってきて、私もやってみたい、と言ったら、居合わせていた友達のお父さんとお爺ちゃんが、快く弟子入りをOKしてくれました。
両親には反対されましたが、それを押し切って陶芸家の道を選び、まだ本当に下手で、新米も良いところなんですが、自分にとっては良い選択だったと思っています。
閑散として暗くて嫌いだった地元だけど、工房は木々に囲まれてて田んぼも見渡せて、郷土愛っていうものが初めて持てたかもっていう実感が湧きました。