昔、バイト先の仲間で高校中退している人がいた。私は学生だったのでのんきなものだったが、彼はその飲食店の社員として昼間の仕込から働いていた。仲良くなるのには時間がかかったが、歳が近かったこともあってか、お酒の席で話したのをきっかけにとても親しく話せるようになった。
高校中退している人と交流を持ったのは彼が最初だったが、それから仕事関係で知り合った人を含めると3人くらいいただろうか。共通していえるのは、みんな礼儀ただしいということだ。誰よりも早く社会人になり、肉体を酷使するような現場でみんな働いてきたという過去がある。そういう現場での上下関係やあいさつは厳しいから自然と礼儀正しさが身につくのだろう。
飲食店の社員として働いていた彼ももちろん、普段は礼儀正しくまじめな勤務態度であった。だからこそ、仕事の場ではあまり親しげに話している時間はなかった。が、ひとたび仕事が終われば、そのあとの変わり方は激しく、明け方まで酒をのんだことも何度もあった。高校中退して社会経験が豊富な彼にはいろいろな遊びを教わったが、ずっと遊んでいる学生の私とは違い、彼はその当時すでに親と暮らすためのマンションを買っていた。