あの頃程、必死になっていた時は無かったと今振り返っても思います。
僕の家は父が随分前に亡くなり、母子家庭になっていたのですが、高1の夏に今まで僕を育ててきた母が突然他界し、母方の祖母の家に引き取られることになりました。
祖父もまた、僕が小学生の頃に亡くなっています。
学費や生活費の心配をし、祖母には迷惑をかけられないと思って、高校を中退しました。
子供は余計な心配をしなくていいとキツく言われたんですが、祖母は足が悪いですし、医療費も何かと掛かります。
それに小学生の妹もいて、こいつだけでも高校に行かせたいと思っていましたから、その前にお金は必死に稼がないといけないという気持ちがあったんです。
中退後は、とにかく就職先を探しました。
当然地方なので、高校中退という経歴の自分を雇ってくれる余裕のある所はありません。
とにかく自分の経歴が経歴なので、学歴不問の所を探し回り、自転車で行ける距離の場所に洋食屋があって、ちょうどそこが学歴不問で求人募集をしていたので応募しました。
家から比較的近いとは言え、今まで見掛けるだけで入った事も無いお店です。
そもそも洋食屋なんて入った事が無かったんで、こんな無知の状態で働けるのかと自信はゼロに等しかったんですが、失敗してもシェフや奥さんの優しいサポートがあったんで、自信もついて一気に仕事が出来る様になりました。
度々道行く学生を羨む気持ちはありましたが、仕事は好きだし、この人達に出会えた事は人生の宝だと思っています。
もうすぐ僕はハタチになりますが、今の仕事がきっかけで料理も特技の一つになったんで、妹が高校を卒業したら、料理を学ぶ為に留学をしようかと思っています。